悪鬼 “無秩序と謀殺とオーガの混沌神”

説明/一般的知識

 神々の戦いの頃、ワクボスはその子供である魔物らが指揮する強大な軍勢を招集した。そうした力ある将は、自分の戦闘部隊を思うがまま自由に組織した。その中でも最も力が強い魔物の1体が悪鬼であり、その兵は彼自身の子である邪鬼やオーガであった。

 ウロックスが悪魔を倒した時、悪鬼は狡猾であったので囚われることなく、世界を破滅へと導くために、その子らと逃亡した。自分の子を養うため、悪鬼は他の自分より愚かな神々を騙し、自分の子供の写しを創らせた。悪鬼はそうした人間達を自分の子供らに食糧として与えた。

 悪魔の死後、悪鬼は自分の強大な軍勢を再編成し、ジェナーテラの大部分を支配した。彼の支配はオーガには良き時代であった。  ワッハの援助を受けたトロウルは、最後には悪鬼に悪罵を浴びせ、そして殺そうとした。しかし傷つけ、異界へ追いやるしかできなかった。  

“時”以降

 オーガは人間社会で生活をし、そして人間を食べつづけている。意思のある生物、特に人間を食べるということは、悪鬼の信者にとって自分達の神を称えるために用いられる、もっとも直接的な様式である。悪鬼の入信者が敵を食べるために《無法》の神力を用いたとき、犠牲者の魂はまっすぐに悪鬼の下へと送られる。

 悪鬼の奥義は邪鬼を、神々の戦争の頃の原初のオーガを1体呼び出す技である。《邪鬼を召喚する》奥義を学んでいる悪鬼の帰依者は、悪鬼の“鈎爪”と呼ばれ、悪鬼の入信者である他のオーガは直感的に“鈎爪”を認識できる。

魔術キーワード

加入条件
 なし。悪鬼の道に従い、混沌を広め、世界中の秩序を乱す者は誰であっても構わない。オーガは本能的に悪鬼を信仰しえ、産まれたときからカルトの入信者であるとも考えられる。現入信者は他のものを、それが如何なる種族であれ悪鬼のカルトへ入信させることができる。
肉体能力
 〈脅す〉〈声色を使う〉〈変装用具を作る〉
精神能力
 〈悪鬼の神話〉〈嘘をつく〉〈他の神の神話(異邦のあるカルトに特定して使用する場合は常に代用修正が課される。秘密の度合いが高かったり、悪鬼信者にとって外部のものであれば、それだけ判定は難しくなる)〉
神力
《無法》
 (《悪鬼への入信を差配する》《意見の相違を広める》《邪鬼を指揮する》《敵を喰う/悪鬼を崇める》)
  神技《敵を喰う/悪鬼を崇める》は、僅かな支持者だけで悪鬼が生き続けるための方法である。悪鬼の信者が敵1人を喰う時に、この神技の使用に成功すれば、その魂はまっすぐに悪鬼の下へ送られる。
《欺瞞》
 (《外見を隠す》《混沌の諸相を隠す》《嘘をつく》《隠れ家を隠す》《神力を盗み取る(抵抗値D+10)》)
 《神力を盗み取る》は、異邦の神の信仰に不正に参加するのに使われる。悪鬼信者はある神を一度信仰するたびに1回、その神力を使用できるようになり、入信者として活動できる。悪鬼の信者は自分では信仰を行えない。だから彼らは組織的な信仰活動に潜入しなくてはならない。勿論、神技は正しい儀式や神話の知識をもたらさないが、しかし代わりに他の偽りの神技や代用能力が使用できる。
奥義
 《邪鬼を召喚する(抵抗値D+20)》
 (悪鬼の邪鬼は、悪鬼自身の姿をした巨大な魔物である。身の丈9mほどで、痩せこけた醜い身体をしており、その衰弱した腕の先には巨大な爪が生えている。特定の邪鬼の能力は、邪鬼を呼び出した“鈎爪”の技能と成功の度合にかかっている。邪鬼は比較的愚かで、できうる限り素早く広範囲に無秩序を広げようとする。呼び出した“鈎爪”は、自分の願いを叶えさせるために邪鬼を操らなくてはならない)

邪鬼
武器と防具:〈戦闘:召喚者の技能値の1/2、最大10W2〉爪:^召喚者の技能の1/5
主要な能力:〈大きい:召喚者の技能値の1/2、最大5W2〉〈魔術への抵抗:召喚者の技能値の1/2、最大5W2〉〈邪鬼への命令に抵抗する:召喚者の技能値+10〉
《邪鬼を召喚する》の成功の度合いにより、技能値とその最大値は増減する。

 邪鬼の召喚は儀式を行う事によって増強できる。
 この儀式は、“嵐の雄牛”に殺されたワクボスの神話を下敷きとする、単純な行為である(“悪魔”の代わりとするために生きた供物が使われる)。邪鬼はその“悪魔”の死体から現れる。
次のものは必ず必要である。
  • 無秩序のルーンの形状をした青銅のナイフ。
  • 悪鬼の像
  • 血を吸った布(悪鬼の“鈎爪”の血であれば+1)
  • 調和のルーンの刻まれたもの(壊される)
以下の供物のうち1つが必要である。
  • 供物が動物である -10
  • 供物が意志のある生物である +1
  • 供物が人間またはトロウル(トロウルキンは除く)である +2
  • 供物が立候補した人間またはトロウルである +4
  • 供物がオーガである +10
以下の儀式の要素がそれぞれ役に立つ
(記されたボーナスが加えられる)。
  • ワッハの呪物(破壊される) +1
  • 儀式の参加者が混沌の諸相を持っている +1
  • 力あるオーガの土地で行われる +3
信者
 悪鬼の信者は主としてオーガである。しかし無法を広げ、世界の破滅を進めるために誰もが歓迎されている。真のオーガだけが悪鬼にその一生を捧げることができる。
顕現
 悪鬼はとても力のあるオーガか、萎びた身体と手の代わりに爪のある巨大な魔物のような生物のいずれかとして描写される。
異界
 悪鬼の信者が死ぬと、俗界で信者が他人の身体を食べていたように、悪鬼はその魂を食べる。
聖地
 グローランサの至る所に、悪鬼の聖地は数多くある。それらは悪鬼自身が何らかの活動を行った場所であるか、悪鬼が共感を覚えるような行為を誰か他のものが為した場所であるか、そのどちらかである。
弱点
 自身の生活様式とその神を維持するために、悪鬼の信者は人間社会の中で生活しなくてはならない。オーガは人型生物を殺し食べることで悪鬼を信仰している。これは明らかに彼らの評判を酷く悪くするだろう。人間に正体がばれたオーガは、多くの文化圏で即座に処刑される。これは他のオーガに会うのを非常に難しくし、それ故にカルトの組織化はとても悪いものである。
 悪鬼は神性介入を一種類の形でしか提供しない。悪鬼の“鈎爪”が死ぬときには、自分の魂を喰らい、自分の代わりに破滅を広げつづけるために、邪鬼を送ってもらえるよう願うことができる。この邪鬼は“鈎爪”の死後、数時間は俗界に残る。入信者は神性介入を行えない。
 悪鬼の信者が悪鬼の聖地の8km以内に入った場合、あらゆる自制心を失い、人間を食いたいという本能に負けてしまう。
注意
 神技《悪鬼を崇める》の一端として悪鬼によって食われた魂は、ヒーロークエストを行うことによって、救われたり地獄へ送られたりする。そのためオーガに食われた誰かを復活させるためには、2度のヒーロークエストが必要になる。1度は犠牲者の不幸な魂を悪鬼の下から救い出し地獄へ送るためであり、もう1つは地獄から魂を取り戻すための普通のヒーロークエストである。

この文章について

 原文:Cacodemon(http://www.glorantha.com/hw/fan/cultshort_cacodemon.html)
 著者:Roger Nolan(Roger.Nolan@Symbian.com)
 翻訳者:鮎方髙明(ayukata@dunharrow.org)

 この魔術キーワードはRoger Nolan氏が作成した物を、作者本人から許可を受け、鮎方髙明が翻訳した物です。
 これはグローランサ・ファンによる創作物であり、公式版ではありません。各人の選択において使用して下さい。この文章により何らかの害を受けたとしても、著者並びに翻訳者は関知いたしません。この文章は、非営利目的においてのみ、複製が許可されます。
 翻訳物に関するご質問は、上記翻訳者までご連絡ください。
 もし誤訳がありましたら、上記翻訳者までご連絡ください。また訳語に関しても「こちらの方が適切なのでは」というものがありましたら、ご教授下さい。適時、修正させていただきます。
 翻訳に関しては以下の資料を参照しました。各関係者に感謝します。

オーガについて

 大暗黒の時代、人間たちは飢餓に苦しめられていました。神々の加護を受けられた者たちや、食糧に関わる偉業をなした英雄が出現した土地の者たちは辛うじて救われましたが、それ以外の多くの者たちは死を迎えました。
 しかしごく一部の者たちは同族を喰らうことで飢えをしのぎ、混沌の穢れを受けることで大暗黒を生き延びました。これがオーガの祖だと言われており、そのため彼らは「人肉への渇望」を持っています。
 ただオーガたちは自分たちこそが人間の原型であると考えているため「誇り高く」、他の人間達に対して蔑みの目を向けています。彼らの見かけは人間とほとんど変わりませんが、少なからず「魅力があり」、また男女共に「力強く」「頑健」で、また一般の人間たちに巧妙に紛れ込むために「変装」の腕に長けています。
 オーガは人間社会に溶け込んでいるため、その社会の「職業キーワード」を持っていても何ら不思議ではありません。また彼らは人間と同じように、「様々な武器を操り」ます。
 彼らは混沌の生物であり、およそ「20体に1体は無作為に選択された混沌の諸相を持って」います。

 (『ヒーローウォーズ』182ページ、『Anaxial's Roster』181ページを参照)

訳語について

 新しい訳語の対訳を一覧しておきます。

用語
“鈎爪” Talon
邪鬼 Fiend