ヴィーヴァモート “アンデッドの王”

 謝辞。『Cults of Terror』(Chaosium, 1981)。

 ヴィーヴァモートはかつては“死”という恐るべき秘密を守っていたが、ユールマルがそれを盗むのを手伝った時に、自分を裏切ってしまった。太陽が地獄へ来た時、ヴィーヴァモートは焼かれ、傷つけられ、醜い姿とされてしまい、今や暗くなった地表へと逃れなくてはならなかった。まもなく悪魔が彼を襲い傷つけた。ヴィーヴァモートは傷を癒す事ができず、そのため混沌の傷によって単に死ぬだけではなく、消滅という事態に直面してしまった。彼は何よりもまず自らの存続を願い、混沌に助けを請うて邪な契約をなした。悪魔は彼に空虚なる生を与え、その“世界の絆”を断ち切り、生からも死からも隔たれたものとした。

 それ以降、ヴィーヴァモートは自らの存在を維持するために、他者から生命を吸い取らなくてはならなくなった。彼は暗黒を通じて世を騒がし、攻撃の相手となった神々から力を裂き獲るためにその邪悪な力を用い、混沌の本質を手に入れた(その際には完全に破壊されてしまった神もいる)。ヴィーヴァモートにはその背信ゆえに彼を呪った敵が多くおり、“時の曙”以来、多くのものに憎まれ恐れられ、彼を受け入れるものは僅かにしかいなかった。その数少ない傲慢な者たちは、どんな犠牲を払ってでも自分の存在を保とうと願うほどに、うぬぼれが強く恐ろしい者たちである。

 ヴァンパイアは人間やその他の定命種で構成された寺院を運営する。そうした従者の中でも、最も信頼の置ける召し使いが、カルトの平信者となることが許される。時に力が強い(それでいて気が触れている)者もまた、ヴァンパイアを捜し求める。もしくは邪悪で危険な儀式を通して、直接ヴィーヴァモートと接触する。ヴィーヴァモートと直接出会った者は、ヴァンパイアとしてカルトに参入する。

 おぞましい祭儀を通じて、平信者はカルトに交わり、そしてもし友人や家族を生贄として連れてきたのであれば、受け入れられる可能性が飛躍的に増大する。そうした者たちは、自身がヴァンパイアとなるまで、もしくはなれなくなるまで、特定のヴァンパイアを主人として、逃れる事のできない従僕となり、そのヴァンパイアは彼を支配する。ヴィーヴァモートの完全な信者となるということは、ヴァンパイアになるという事であり、そうしたアンデッドの1人になるための祭儀は、カルトによって執り行われる。それは平信者に紛う事無き死とそして再生を体験させる。混沌に転じ、カルトの助力無しでヴィーヴァモートの“好意”を得ることができた魔道士は、独力でこのおぞましい変容に耐える。

 存在しているヴァンパイアの社会というのは、ヴィーヴァモートのカルトを介するものだけである。それでもこれは相当にもろい組織である。ヴァンパイアの多くは非常識なほど尊大であり、あらゆる生命を酷く嫌っている。彼らは他のヴァンパイアですら酷く嫌っており、利用可能な乏しい資源を争うライバルではないかと恐れている。一般的にヴィーヴァモートに捧げられた社は、たった3〜7名程度のヴァンパイアによって運営されている。これより多くだと激しい競争心により、ヴァンパイアがヴァンパイアを殺す結果に終わってしまう。これはヴィーヴァモートの規則に真っ向から違反しているので、通常は1体以上のヴァンパイアが他の者たちから単に追放されることによって、問題は終わらされる。例えそうだとしても、ヴァンパイアというのは長期間存在する傾向にはない。全体の90%が最初の数年で、残りの90%も続く10年以内に未熟なために駆逐されてしまう。これらを生き延びた極僅かなものだけが、最終的に恐ろしく強力になりえるのである。

 典型的なヴィーヴァモートの社の構成というのは、実際には存在しない。ヴァンパイアの中には完全に隠れたままでいることを望むものもいるし、またブルーや蠍の民といった他の混沌生物らの協力者として生活するものもいる。それでも他の者たちは定命種の局部的地域の住民らを支配し、恐怖の諸卿Lords of Terrorとして暮らしている。極稀に、一地方の犯罪社会の様々な側面を運営するのに充分なほど、組織されているヴァンパイアらもいる。混沌が広く行き渡ったような土地にだけ、ヴィーヴァモートに捧げられた真の寺院が生まれ、それから最も歳経たヴァンパイアは時に互いに同盟を結ぶこともある。そうした同盟は、例えヴァンパイアらを統制するためにとても強力な指導者がいるとはいえ、比較的平和裏に多くのヴァンパイアを集めることができる。

魔術キーワード

加入条件
 “定命の祖父”の末裔でなくてはならない。ヴァンパイアの好意を得ているか、ヴィーヴァモートから直接に不死の祝福をもぎ取れるほど強力であれば、他に条件はない。
肉体能力
 〈静かに歩く〉〈物陰に隠れる〉
精神能力
 〈嘘をつく〉〈ヴィーヴァモートの神話〉〈[魔道書名]を読む〉〈暗黒語を読む〉〈暗黒語を書く〉
魔道書
『ヴィーヴァモートの書[虚ろなる者の信条(ヴァヌス・クレド)]』
 (《気付かれずに通り抜ける》《従僕の治癒》《神教魔術に抵抗する》《精霊を追い払う》《陶酔境》《魔術から隠れる》)
『亡者の書』
 (儀式。《グールを死体に封じる(原注1)》《ゴーストを創る》《スケルトンを創る》《ゾンビを創る》《グールを召し出だす》)
『忌むべき下僕の書』
 (《ヴァンパイアに命令する(原注1)》《グールに命令する(原注1)》《ゴーストに命令する(原注1)》《スケルトンに命令する(原注1)》《ゾンビに命令する》《ネズミの群れを呼ぶ》《夜の精霊を呼ぶ/命令する》)
奥義
 《ヴァンパイアを創る》
 (儀式魔術。通常、変容は平信者に用意されたものであるが、時にはカルトの敵が魅了され、恐るべき復讐としてヴァンパイアに変えられる場合もある。如何なるヴァンパイアも1季に複数のヴァンパイアを創ることはできない)
信者
 ヴィーヴァモートの従者には、ヴァンパイアをなだめることだけを願う、おびえた地元住民も含まれる。しかしそうした住民はヴァンパイアから家畜のように見られており、また稀にではあるが、そうした者の1人がヴァンパイアから極めて有能であると認められて、平信者となることもある。通常、認知された定命種の平信者は、お気に入りの従僕として、カルトから手に入れられる力を求めている。そしてまた、自分の忠実な奉仕の褒賞として、不死の賜り物を許されることを夢見ている。
異界
 暗黒や地界でも信者を獲得する儀式が知られているとはいえ、ヴィーヴァモートのカルトは“異界”には存在しない。この2つの領域は、そこを旅している信者に対しペナルティを負わすことはない。
つながり
 神々の時代にマリアがヴィーヴァモートをかくまって以来、ヴァンパイアはマリアのカルトとの関係を維持している。ヴィーヴァモートは他には密接なつながりを持っていないが、彼の従者はその時々に他の混沌の信者と同盟を結ぶ。
弱点
 ヴィーヴァモートの従者はあらゆる定命種から憎まれ、恐れられている。時間がたてば、ヴァンパイアは人間性の最後の一欠けらと、それから正気への既にもろくなったよすがを失う危機に直面する。そうして彼らは永遠の消滅が続くことこそを願うようになる。

従僕について

 平信者として認められカルトへの参入を選んだ定命種は、死の接吻により“祝福”され、“ヴァンパイアの従僕”と呼ばれるようになる。ヴァンパイアがアンデッドの状態を最初に獲得した時に、1人だけ繋がりのある従僕を維持することができる。アンデッドとして丸10年を生き延びるごとに、追加の従僕を1人維持できるようになる。“受け入れ”の儀式によって、対象の平信者は主人たるヴァンパイアの奴隷となり、両者の間には絆が生まれる。3度の儀式すべてにわたり、ヴァンパイア自身が平信者に加えた傷から血一滴を摂取することで終わり、対象はその時点で混沌に汚されたことになる。ヴィーヴァモートのカルトへの“受け入れ”は、自動的に非混沌、暗黒または無秩序のルーンを有するカルトから対象を破門させる。“受け入れ”には3つの段階がある。

  1.  第1段階では、従僕は《跳躍:3W》《病や毒に抵抗する:16》《速く走る:18》《力強い:18》の能力を獲得する。これらは魔術的な能力であり、従僕がより高い段階になることを除いては、成長させることができない。もしヴァンパイアが滅ぼされれば、第1段階の従僕はすぐさま“軽傷”を負う。3Wの魔術効果として、この効果に対し抵抗できる。あらゆる魔術技能とボーナスは、ヴァンパイアの死によりすぐさま失われる。
  2.  第2段階では、定命種は上記の新たな能力それぞれが2点増える。また加齢の減少という恩恵を受け、戦闘で非魔術武器によって失うAPは2/3となる。この段階で、従僕はヴァンパイアの《魔睡》に対する免疫を得るが、自分の主人のものは例外となる。そして今となってはまるで猫のように闇を見通すことができるようになる。もしヴァンパイアが滅ぼされれば、第2段階の従僕はすぐさま“重傷”を負う。もしこれに抵抗できれば、平信者は代わりに“軽傷”を負う。
  3.  第3段階では、上記の能力はさらに2点増え、これからは従僕の加齢はほとんど解らないものとなる。戦闘で非魔術武器によって失うAPは1/3となる。また第3段階の従僕は、成長しない能力として〈精神/感情の魔術に抵抗する:17〉を獲得する。もし主人であるヴァンパイアが滅ぼされれば、また第3段階の従僕は“瀕死”となる(もしこれに抵抗できれば、従僕は代わりに“重傷”となる)。もしヴァンパイアが“重傷”となれば、従僕は“軽傷”をなる。抵抗に成功すれば、これを打ち消すことができる。

 従僕の集団では、第2段階のものが最も一般的である。第3段階の従僕は稀であり、そうしたものは主人に信頼されており、ヴァンパイアと変容する儀式を受ける前の試用期間を効果的に過ごしている場合などにそうなる。

ヴァンパイアについて

 ヴァンパイアとなることで、対象は自動的に以前にいた非混沌カルトから破門される。そして生きることを止め、即座にアンデッドに集約された力によって冒される。新たなヴァンパイアは《跳躍:9W》《忍び歩き:19》《速く走る:5W》《力強い:5W》の能力を獲得する。既得の能力が劣る場合、これらの能力に置き換えられる。しかしもし能力が既に高いレベルで獲得されている場合、それに2点加えられる。これらの能力は、ヴァンパイアがその不死を20年生き延びるごとに1点増える。ヴァンパイアは青白い肌をしており、触れると死体のように冷たい。しかしそれ以外は人間で通用する。アンデッドになって10年を越えていない場合は、特にそうである。この後、多くのヴァンパイアは青白く死体のようになる。

 《魔睡》:ヴァンパイアは“定命の祖父”の末裔を《魔睡》する能力を持っている。この力は技能値16として始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。ヴァンパイアは目標の目を凝視しなくてはならず、互いに精霊戦闘をするかのようにこの力を使用する。僅差か小差の勝利の場合、視線を合わしつづけ、犠牲者に集中することで、ヴァンパイアは犠牲者のゆっくりとした動きを支配できる。大差の勝利の場合、近くに居続けさえすれば、ヴァンパイアは犠牲者を魔術によって動けないまま放っておくこともできる。そして他の犠牲者に《魔睡》を試みることができる。完全な勝利の場合、ヴァンパイアは上記に加えて、完全に精神的なものによる命令で、犠牲者1人を従わせることができる。

 《生命力吸収》:ヴァンパイアは“定命の祖父”の末裔である生物から、触れるだけでその生命力を吸収できる。この生来の能力は17で始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。魔術ないしは魔術的な補助技能だけがこの能力に抵抗できる。これは即時対決として攻撃される。これは直接、犠牲者の〈力強さ〉を攻撃する(もし〈力強さ〉を持たない場合、初期値を使用する)。僅差の勝利は1点の吸収、小差の勝利は2点の吸収、以下同様に増えていく。犠牲者が何らかの方法でヴァンパイアにダメージを与えたのでない限り、ヴァンパイアは《生命吸収》に失敗してもAPを失わないことに注意すること。ヴァンパイアによって吸収された値の半分(端数切捨)は、“血の呪い(後述)”に抵抗するためにヴァンパイアに求められる総計として数えられる。直接、血を吸うよりも効果が少なくなっている。

 《神技吸収》:《生命力吸収》に大差の勝利か完全な勝利を収めることで、生命力の代わりに犠牲者から神技1つを自動的に奪うことにしても構わない。神技は犠牲者の通常の能力値として獲得され、ヴァンパイアの所有物となる。犠牲者は(例え生き延びたとしても)再び自分の神の社か寺院へと赴き、儀式的に浄化されるまでは、この神技を使えない(そして再び神技は、通常の手段による通り初期値で獲得される)。ヴァンパイアはアンデッドとして存在した年数、10年につき1つの神技を蓄えることができ、好きなときに使用できる。もし神技の使用に失敗しても、神技は失われる。

 物理ダメージの無効化:ヴァンパイアは物理的な方法で、そう武器や拳を単純にぶつけられても傷つかない。何らかの魔術によって強化された武器だと、この防護に打ち勝てる。鉄や銀の武器もまた、通常どおりヴァンパイアを傷つけられる。ヴァンパイアはまた病や毒も無効化する。

 《精神/感情の魔術に抵抗する》:ヴァンパイアは生来の能力として、自分の精神や感情を対象とした魔術に抵抗できる。これは17で始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。そうした魔術が成功したとしても、効果の減少が可能であれば、効果は半減する。

 《闇を見通す》:この能力は非魔術的な暗黒には自動的に作用する。しかしながら暗黒がヴァンパイアに対する魔術攻撃として生み出されたものであるなら、これを見通すためにこの能力を使用しなくてはならない。この技能は16として始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。

 《霧になる(原注2):ヴァンパイアは丸々1ラウンドかけて霧に姿を変えることができ、通常の速度で移動もできる。この状態であってもまだ魔術による影響を受けるが、簡単に戦闘範囲以上に浮かび上がることができるし、安全に小さな隙間を通り抜けることもできる。もしヴァンパイアが0APになった場合、自動的に霧へと姿を変え、自分の棺桶へ逃げようとする。この技能は1Wで始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。

 ヴァンパイアの無力化:ヴァンパイアの頭を切り落とすことで、ヴァンパイアを活動停止に追い込むことができる。しかし相当に年経たヴァンパイアは、何の助けが無くても自分の頭を再び繋げられる程に強力である。ヴァンパイアの脳はもろく、もし激しく攻撃されれば、ヴァンパイアは死ぬだろう。同じ事が心臓にも言え、死や生命のルーンの信者によって、木の杭を用いて穴を開けることができる。確実にヴァンパイアを殺すためには、無力化するために杭で突き刺すか、頭を切り落とす。なるべくなら両方が好ましい。それから完全に焼くことである。もしヴァンパイアが杭で刺され、その身体がそのままで残されていたら、再生が可能であり、突き刺しているものが外されれば、再び起き上がってくるだろう。

 混沌の諸相:如何なる方法によったとしても、ヴァンパイアになった者は以下の表から“ヴァンパイアの混沌能力”をランダムに1つ獲得する。これらの能力はすべて1Wの技能として始められ、ヴァンパイアがその不死を10年生き延びるごとに1点増える。ヴィーヴァモートのカルトに属するヴァンパイアは、探索行を実行することで追加の諸相を獲得できる。とはいえ、それは極めて危険で、準備に数年を要するものである。大いに機知に富んだヴァンパイアは、平均するとその不死を生き延びた年数、20年につき1つの混沌能力を追加で持っている。

混沌の諸相
D20 ヴァンパイアの混沌能力
1  《蝙蝠になる(原注2)(ヴァンパイアは自由に蝙蝠に変身でき、変身には1ラウンドかかる。その蝙蝠は蝙蝠として基本的な能力を持っているが、ヴァンパイアの意思を持っており、その種の本当の生物からは避けられる。訳注:蝙蝠に関して既存データなし、巨大蝙蝠に関しては『Anaxial's Roster』100ページを参照)
2  《巨大な蜘蛛になる(原注2)(《蝙蝠になる》を参照。しかし普通の小さな蜘蛛であるかのように、その蜘蛛はよじ登りしがみつくことができる。訳注:巨大グモに関しては『ヒーローウォーズ』186ページ参照)
3  《狼になる(原注2)(《蝙蝠になる》を参照。訳注:狼に関しては『ヒーローウォーズ』181ページ参照)
4  《影になる(原注2)(ヴァンパイアの身体は影のように暗くなり、実体が無くなる。しかし霧形態とは異なり、影形態はどうしてもゆっくりと出歩く以上の速さで移動できない。そのため、これは待ち伏せか監視にのみ有益である)
5  《大気に抵抗する》(この能力を持つヴァンパイアは、霧形態になった時に大気の精霊に分散させられるのに抵抗することができる)
6  《死に抵抗する》(この能力を持つヴァンパイアは、死の信者が持つ死のルーンによる制圧に対するために《魔睡》を増強できる。)
7  《大地に抵抗する》(この稀なヴァンパイアは、特定の棺桶や墓場の土がなくても存在することができる。しかしそれでも1日に8時間の昏睡状態になる休息が必要であり、さもなければ通常の影響を被る)
8  《銀に抵抗する》(銀からのダメージに抵抗するための、あらたな生来能力である)
9  《太陽に抵抗する》(単純に、このヴァンパイアは陽光下でも《生命力吸収》や《魔睡》、動物への変身を行えることを意味している。またヴァンパイアは火によるダメージに抵抗できる。このヴァンパイアは影を投じ、反射物に姿を移す)
10  《水に抵抗する》(この能力は流れ水によるダメージに抵抗する)
11  《蜘蛛の歩み》(ヴァンパイアはまるでそこが完全な大地であるかのように、自動的に安定した表面を歩いたり走ったりできる)
12  《偽りの生》(ヴァンパイアは見たところ普通の礼儀にのっとって飲食物を摂取でき、一般で許容できる肌の青白さをしており、息をしているように見え、そして影を落とし、反射物に姿を移す。これは《変装》ではなく、この場合のヴァンパイアは本来の外観を保っている)
13  《一なる多者》(ヴァンパイアは自分の実体の無い偽物を創ることができる。僅差の成功を始まりとして、基準の抵抗に対する成功の度合いにつき1体が生じる。ヴァンパイアを見つけ攻撃するのが難しくなるように、これらの幻影はお互いの周りを回っている)
14  《死の飛行》(ヴァンパイアはゆっくりと自分を大気に持ち上げ、歩く速度で自分の身長の10倍の高さまで浮かび上がり、精神集中を維持できているなら、如何なる距離も渡ることができる)
15  《透明化(原注2)(透明になっている間は、ヴァンパイアは他の魔術を投射できないし、霧に変わることを除いて、特殊能力を使うこともできない)
16  《大地を汚す》(ヴァンパイアはあたかもその土地が棺桶であるかのように使えるように、1日に1度土地を汚すことができる。ヴァンパイアは大地の精霊にさえ気付かれずにおれるが、違う場所から現れる必要ができた場合、数メートルくらいしか地中を移動できない)
17  《鉄に抵抗する》(この能力は16から始められ、鉄からのダメージを防ぐ)
18  《すぐさま目覚める》(休眠状態から目覚めたとき、ヴァンパイアはペナルティを被らない)
19  《目で追えないほど速い》(ヴァンパイアは人間が目で終えないほどの速度で、100メートルまでの距離を走り抜けることができる。成功するごとに技能は3減少するが、8時間の休息を取ると完全に回復する)
20  《変装》(ヴァンパイアは自分自身に、一般人の映像を投影できる。この《変装》はまるで本物のように見えるが、この能力を持つヴァンパイアは1つの《変装》しか採用できず、一度選択するとこれを変えることができない)
ヴァンパイアの弱点
ヴァンパイアの弱点
 停滞の呪い:ヴァンパイアがアンデッドとなって後は、魔道とヴァンパイアに特別に関係しているものとして列記された技能しか成長しない。所有している他の技能や能力は、死の直前まで持っていたままで残る。これは“時”の作用を受け入れるのをヴァンパイアが拒絶した結果であり、成長可能な能力にしてもゆっくりとした成長と見なされる。
 血の呪い:ヴァンパイアは自分の存在を維持するために、生きた知覚力のある生物の血を飲まなくてはならない。そうした生物は“定命の祖父”の末裔でなくてはならず、混沌であってはならない。通常、ヴァンパイアは犠牲者を《魔睡》し、能力〈力強い〉を吸収する(この能力を持たない場合は、初期値を使用する)。ヴァンパイアが生存するためには、1日に5点吸収しなくてはならない。しかし一度に35点まで吸収しておくことができ、それだけあれば1週間もつことになる。ヴァンパイアはこの蓄えられた活力を、自分を癒すために使用できる。“軽傷”には1点、“重傷”には6点、“瀕死”の状態から“重傷”になるためには9点必要である。もしこれが5点以下になった場合、自動的に霧へと姿を変え、次の日没まで留まる自分の棺桶へと帰っていく。
 死の呪い:フマクトやタイ・コラ・テックといった死のカルトの入信者や帰依者は、ヴァンパイアに立ち向かうために死のルーンを突き出すことができ、自分の〈[神名]への帰依〉(+3ボーナス)や〈[神名]への入信〉(-3ペナルティ)を用いて、ヴァンパイアの《魔睡》に打ち勝とうと試みれる。もし成功した場合、ヴァンパイアは彼らに対して《魔睡》を使えず、姿を変えることもできず、そして彼らが死のルーンを提示している限り、物理ダメージの影響を受けるようになる。
 火の呪い:“太陽”は地獄からヴィーヴァモートを追い出し、彼を呪った。ヴィーヴァモートがイェルムの敵であるために、あらゆる種類の火はヴァンパイアに通常にダメージを与える。自分の棺桶で“眠る”ことを除いては、ヴァンパイアはこのダメージを癒せない。ヴァンパイアは陽光下、表を出歩くことができ、新しいヴァンパイアの多くは、気をつけてさえいれば生者として通用する。しかし太陽の光の下では、彼らは《生命力吸収》や《魔睡》ができず、動物に姿も変えられない。またヴァンパイアは反射物に姿を移さず、影を落とすこともない。
 水の呪い:世界のあらゆる水は、ヴィーヴァモートに対するスティクス河の誓いを担っている。橋やボート、もしくは誰かの背に乗らない限り、ヴァンパイアは流れ水を渡れない。もし無理やりそうさせられたり、また騙された場合は、まるで火の壁を通り抜けたかのようにダメージを被る。流れ水に浸せばヴァンパイアを殺すことができる。しかし沼や湿原であれば、何ら罰則を受けずにヴァンパイアは渡ることができるし、住むこともできる。スティクスの水の一滴はヴァンパイアを滅ぼせる。
 大気の呪い:大気の生き物(風の精霊や嵐のダイモーンなど)は霧形態になったヴァンパイアを撒き散らすことができる。ヴァンパイアは精霊の〈力強さ〉の値の半分と等しい時間の間、再び姿を取り戻すことができない。
 大地の呪い:どのヴァンパイアも眠るために棺桶と自分の墓の土を多少必要とする(気の回るヴァンパイアであるなら、異なる隠れ家にそうした棺桶を2ないしは3個持っているものである)。死を静めるために、ヴァンパイアは棺桶の中に入り、昏睡状態で毎日最低8時間は過ごさなくてはならない。棺桶の中で過ごす時間が1時間足らないごとに、ランダムに3つの能力が1点失われる。これは後に棺桶の中で余分な時間を費やすことでのみ回復できる。従って棺桶の破壊の結果、ヴァンパイアは日に日にゆっくりと腐り衰弱していく。また棺桶の中で不意を討たれ、完全に侵入者に気付かなければ、休眠状態から目覚めたときの反応は緩慢であるため(“重傷”と見なす)、ヴァンパイアは無防備である。

サンプル・キャラクター

生まれたてのヴァンパイアのサンプル
主要な能力:《霧になる:1W》〈近接戦闘:19〉《生命力吸収:17》《魔睡:16》《跳躍:9W》《忍び足:19》《精神/感情の魔術に抵抗する:17》《銀に抵抗する:1W》《速く走る:5W》《闇を見通す:16》《力強い:5W》(加えて以前の職業キーワードの技能)
魔道書:
『ヴィーヴァモートの書:12』(《神教魔術に抵抗する》)
『忌むべき下僕の書:12』(《夜の精霊を呼ぶ/命令する》)

“一人前”のヴァンパイアのサンプル
主要な能力:《霧になる:7W》〈近接戦闘:19〉《生命力吸収:3W》《魔睡:2W》《偽りの生:4W》《目で追えないほど速い:2W》《跳躍:15W》《忍び足:5W》《精神/感情の魔術に抵抗する:3W》《太陽に抵抗する:7W》《速く走る:11W》《闇を見通す:2W》《力強い:11W》(加えて以前の職業キーワードの技能)
魔道書:
『ヴィーヴァモートの書:4W』『亡者の書:15』『忌むべき下僕の書1W

ターシュのレインファルド(第2段階の人間の従僕のサンプル)
武器と防具:〈近接戦闘:16〉シミターと楯:^3;楯:^1
主要な能力:〈イリピー・オントールの神話:17〉〈ヴィーヴァモートの神話:12〉〈改宗:15〉〈七母神の神話:14〉〈忍び歩き:19〉〈新ペローリア語を話す:13〉〈新ペローリア語を読む/書く:14〉〈鋭い聴覚:7W〉〈聖典の引用:17〉〈セデーニアの哲学:12〉〈ターシュ語を話す:16〉〈ターシュ語を読む/書く:16〉《力強い:20》《跳躍:5W》〈討論:15〉〈泣き言で説得する:18〉《速く走る:20》〈卑屈に振る舞う:3W〉〈物陰に隠れる:17〉《病や毒に抵抗する:18》

“裏切者”ブリンゴルフ(第3段階の人間の従僕のサンプル)
武器と防具:〈近接戦闘:9W〉槍と楯:^3、剣と楯:^3、鈍器:^1〜3;楯:^1
主要な能力:〈威圧するようににらむ:4W〉〈ヴィーヴァモートの神話:10〉〈脅すように不気味に現れる:5W〉〈鋭い聴覚:18〉《精神/感情の魔術に抵抗する:17》《力強い:2W》《跳躍:7W》〈登攀:6W〉〈物陰に隠れる:5W〉《速く走る:2W》〈ヒョルト語を話す:16〉〈ほらふき:14〉《病や毒に抵抗する:20》

原注

原注1
 術者によって呼び起こされたものにだけ作用する。
原注2
 実体が無かったり動物の姿をとったヴァンパイアは、生来の防衛能力はまだ機能しているものの、魔術を投射できず、また他の特殊能力も使用できない。

この文章について

 原文:Vivamort(http://www.glorantha.com/hw/fan/cultshort_vivamort.html)
 著者:Ian Thomson(arkat@primus.com.au)
 翻訳者:鮎方髙明(ayukata@dunharrow.org)

 この魔術キーワードはIan Thomson氏が作成した物を、作者本人から許可を受け、鮎方髙明が翻訳した物です。
 これはグローランサ・ファンによる創作物であり、公式版ではありません。各人の選択において使用して下さい。この文章により何らかの害を受けたとしても、著者並びに翻訳者は関知いたしません。この文章は、非営利目的においてのみ、複製が許可されます。
 翻訳物に関するご質問は、上記翻訳者までご連絡ください。
 もし誤訳がありましたら、上記翻訳者までご連絡ください。また訳語に関しても「こちらの方が適切なのでは」というものがありましたら、ご教授下さい。適時、修正させていただきます。
 翻訳に関しては以下の資料を参照しました。各関係者に感謝します。

 サンプル・キャラクターであるターシュのレインファルド、“裏切者”ブリンゴルフに関しては、「武器と防具」という欄を新設して、戦闘技能を抜き出しました。またブリンゴルフは「Blunt Instrument Attack 6W」「Spear and Shield Fighting 9W」「Sword and Shield Fighting 4W」と近接戦闘を3つ持っていたので、高いものに統一しました。

陶酔境について

 

グールについて

 異界からやってきたグール精霊が死体に憑りつくことで、グールは生成されます。詳しくは『Anaxial's Roster』237ページを参照ください。これと上記の呪文から想像するに、《グールを召し出だす》でグール精霊を呼び出し、《グールを死体に封じる》で死体に封じ込め、そうしてグールを創るのだと思われます。

訳語について

 新しい訳語の対訳を一覧しておきます。

能力
〈威圧するようににらむ〉 Intimidating Glare
〈脅すように不気味に現れる〉 Loom Menacingly
〈静かに歩く〉 Move Quietly
〈忍び歩き〉 Sneak About
〈鋭い聴覚〉 Hear Acutely
〈登攀〉 Climbing
〈泣き言で説得する〉 Convince by Whining
〈卑屈に振る舞う〉 Act Subservient
奥義
《ヴァンパイアを創る》 Create Vampire
呪式
《ヴァンパイアに命令する》 Command Vampire
《気付かれずに通り抜ける》 Pass Unseen
《グールに命令する》 Command Ghoul
《グールを死体に封じる》 Bind Ghoul
《グールを召し出だす》 Raise Ghoul
《ゴーストに命令する》 Command Ghost
《ゴーストを創る》 Create Ghost
《従僕の治癒》 Heal Servant
《神教魔術に抵抗する》 Resist Theist Magic
《スケルトンに命令する》 Command Skeleton
《スケルトンを創る》 Create Skeleton
《精霊を追い払う》 Repel Spirit
《ゾンビに命令する》 Command Zombie
《ゾンビを創る》 Create Zombie
《陶酔境》 Ecstatic Communion
《ネズミの群れを呼ぶ》 Summon Rat Pack
《魔術から隠れる》 Hide from Magic
《夜の精霊を呼ぶ/命令する》 Call/Command Night Spirit
混沌の宿能
《一なる多者》 One is Many
《偽りの生》 Fake Life
《狼になる》 Become Wolf
《影になる》 Become Shadow
《巨大な蜘蛛になる》 Become Giant Spider
《銀に抵抗する》 Resist Silver
《蜘蛛の歩み》 Spiderwalk
《蝙蝠になる》 Become Bat
《死に抵抗する》 Resist Death
《死の飛行》 Death Flight
《すぐさま目覚める》 Instant Wakefulness
《大気に抵抗する》 Resist Air
《大地に抵抗する》 Resist Earth
《大地を汚す》 Defile the Earth
《太陽に抵抗する》 Resist the Sun
《鉄に抵抗する》 Resist Iron
《透明化》 Invisibility
《変装》 Disguise
《水に抵抗する》 Resist Water
《目で追えないほど速い》 Faster than the Eye
特殊魔術能力
《霧となる》 Become Mist
《忍び足》 Move Silently
《神技吸収》 Drain Feat
《精神/感情の魔術に抵抗する》 Resist Mind/Emotion Magic
《生命力吸収》 Drain Essence
《力強い》 Strong
《跳躍》 Leap
《速く走る》 Run Fast
《魔睡》 Enthralment
《病や毒に抵抗する》 Resist Disease and Poison
《闇を見通す》 See in Darkness
魔道書
『ヴィーヴァモートの書』 The Book of Vivamort
『虚ろなる者の信条(ヴァヌス・クレド)』 Vanus Credo
『亡者の書』 The Book of Unlife
『忌むべき下僕の書』 The Book of Foul Minions
用語
“受け入れ” Acceptance
従僕 Servant
“世界の絆” Universal Unity